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岩田榮吉の作品

 作品点描
  ワイン文化(その2:《ぶどう酒と宝石箱》)


酒と文化の関係には浅からぬものがあります。各国各地域を見渡してみても、それぞれの自然環境、歴史、宗教と密接に結びついて、酒は文化を特徴づけています。その点ワインは、とくに13世紀ころからのプロト・ルネサンス期以降、ヨーロッパ文化の展開と密接な関係を保ってきました。酒を飲まなかった(飲めなかった)岩田も、パリに居住し、ヨーロッパ発祥の油彩画を志す以上、ワインを無視することができなかったのは当然のことと言えるでしょう。

岩田の《ぶどう酒と宝石箱》はタイトルの通りその時代のワインと富の関係を示唆しています。画面上左からの強い光にオブジェが浮び上り、背景は闇のように沈んでいる…という設定は、同時期の作《ルイブラス》《スペインの夜》などと共通しており、ヨーロッパの地中海側を示唆する表現です。画面下方3分の1を占める台上にオブジェ類が配置され、上辺中央を頂点とする三角構図に細密迫真の筆致でまとめられて、力強く落着いています。

中央に目を引くカットガラスのデキャンタは、密閉栓つきであるところを見ると、中身はブランデーでしょうか。となれば、画面右のデキャンタにはいっているのは、沈殿物が多い糖度を上げたワインに違いありません。シェリー、マデイラやポートワインなどの酒精強化ワインも含めて、これらのワイン製品は、輸送容器(樽、コルク栓つきの瓶など)の製造技術向上とも相まって、当時一般のワインに比べ品質保持性に優れ、より長時間の輸送に耐えられるようになりました。



《ぶどう酒と宝石箱》 1972年 (画集No.49)


高い保存性を活かす途が本作画面左半分に示されます。精度の高いクロノメーター(航海用の時計)開発に象徴される操船・航海術の高度化は、ワイン製品運搬船の航路を、地中海中心の海域から、ガラス玉に映し出される外洋へと広げたのです。置かれたトランプは知性・冷静さを表すクラブのクイーン。産地としての適性だけでなく、製品改良、販路拡大などの実践はヨーロッパのワインが文化として根付く基礎となったのです。



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